優勝トロフィーを買いに。

20年くらい前の話です。
私は新卒で、ある仲卸しの会社に就職しました。
社員数30人くらいのごく小さな会社です。
入社した年の夏でした。
会社が夏休みにはいる直前、「社内ボーリング大会」が催されることになりました。
初めての開催とのこと。
私はボーリング経験はほとんどなく、点数は100がやっとという女性並みの実力。
「困ったなあ、いやだなあ」と思いました。
先輩の話では、会社では年1度の社員旅行のほかは、親睦のためのリクリエーションはまったくやったことがなかった。
それが、2年前に先代社長から今の2代目に代わってから、2代目が「社員の親睦」に力をいれるようになり、花見とかバーベキューとか、めんどうな行事がいろいろ増えた、ということです。
そういうことが苦手な私は、「先代社長のときに就職したかった」と思ったものです。
しかも、ボーリング大会の幹事に、5年くらい先輩の人と私が指名されてしまったのです。
なにしろだれも経験したことのない大会ですから、頼れる人はありません。
いろいろ大変でしたが、まあなんとか事前の準備は完了しました。
そしていよいよ大会当日。
昼前頃、社長がふらっとやってきて、わたしたち幹事に、「トロフィー、用意してるよな?」と聞きました。
社長は当然優勝者用のトロフィーは準備してるだろうな、という口ぶりです。
私たちはまったく考えてませんでした。
賞品はいろいろ工夫をこらして用意してましたが、トロフィーなんて発想がそもそもありませんでした。
社長は「それはまずいよ。トロフィーないと、やっぱだめだよ」と顔をしかめて言いました。
つまり「これから買いに行って間に合わせろ」というわけです。
「はい」と答えるしかありません。
さあ、困りました。
今ならネットで調べれば、トロフィーがどこで売っているかすぐにわかりますが、当時は社内にまだ、パソコンもない時代だったのです。いったいどこへ行けば売っているのか。
しかも時間がない。
先輩と頭をかかえていますと、ベテランの女性社員が
「ねえ、東急ハンズに聞いてみれば?ハンズはパーティグッズいろいろ売ってるじゃない。トロフィーだって、言ってみればパーティグッズでしょ?」
地獄に仏のそのひとこと。
彼女の言うとおりです。
さっそく電話で問い合わせてみると、「はい、扱っています」。やったー!
先輩は仕事でお得意さんとの約束があるとのことで、私が一人で買いに行くことになりました。
会社は田端、めざすは池袋の東急ハンズ。
飛んで行きました。
ありました。
買いました。
びっくりするほど安かったことを覚えています。
そして、大会で優勝してトロフィーを手にしたのは、なんと、女性ハンデを生かした、あのベテラン女性社員だったのです。
私と先輩は「一番もらってほしい人がもらってくれた」と喜びました。
私はその会社を2年後に辞職しましたが、今でもボーリング大会やってるんでしょうか。
東急ハンズのトロフィーは伝統になってるんでしょうか。
あの女性社員はもう定年になってる年だと気づいて、月日の流れを実感しました。

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